ロコモティーバの何でも言い合える良い雰囲気を、できれば野球の中身についても言い合えるようにしたいと思いますので書き込みます。
野球は確率のスポーツです。現代野球の考え方を紹介します。
2011年夏の甲子園で印象的な采配がありました。
8月18日に行われた作新学院×智弁学園の一戦です。
9回表までのスコアは以下のとおりでした。

作新学院は9回表、0アウトランナー1塁の場面から送りバントをせず、次打者のヒットなどで2点を取り、逆転で勝利しました。この時の作新学院の監督(28歳)の采配は当日夜の熱闘甲子園などでも、「積極的な采配」「打者を信頼した采配」などのコメントとともに紹介されましたが、本当は野球の確率に基づいた正当な采配でした。
私は智弁学園を応援していましたので、試合展開(作新学院はエース投手を中盤で交代させ、その後は2番手~4番手までを登板させながら8回までに逆転されていた。対して智弁学園は先発に2番手を投げさせ中盤からエース投手に交代し4回以降は0点に抑え、打線が8回までに逆転していた)を考えても、非常に悔しい負けでしたが、最後は作新学院の監督の采配に負けたと思いました。あの時バントをしてくれれば智弁学園は勝てたのにと思いました。
なぜ、9回表0アウトランナー1塁から打たせる監督の采配が良いのかを説明します。
表1 後攻チームが1点差で負けている状況での勝利確率
(単位:%)

表1は2004年から2009年までの日本のプロ野球のデータを用いた勝利確率です。
改めて説明すると、0アウトランナー1塁からバントをするという事は、1アウトランナー2塁という状況を作るためにしている事です。
それでは、0アウトランナー1塁と1アウトランナー2塁ではどちらのほうが勝つ確率が高いのかをイニング別に表したものが表1です。
簡単に説明すると0アウトランナー1塁を1アウトランナー2塁にするとどのイニングであれ勝利確率は下がってしまうのです。
プロ野球のデータだからこうなる?ちがいます。
今回参考にした本では、高校野球のデータも掲載されていますが、どのイニングも軒並み勝利確率は下がっています。そもそもプロ野球であれ、高校野球であれ、草野球であれレベルの違いはあっても同じ野球というスポーツですので、全体的な確率の傾向が変わるわけではない事は感覚的に分かってもらえると思います。
この表のデータが偏っているのではないか?ちがいます。
この表は1点差で負けているという、いかにも「1点を取りにいくために送りバント」が定石とされがちな場面をあえて用いたうえで、得点の大小を問わず、逆転で勝利する確率を計算しており、どちらかというと送りバントを肯定したい側に有利なように偏った切り口になっているくらいです。
得点期待値というもう少しポピュラーな数値を用いると、0アウトランナー1塁の場面と1アウトランナー2塁では、もっと下がっている場合が多いくらいです。
表2 得点期待値 2002年 メジャーリーグ

また得点期待値を用いた計算では、2アウトになると極端に得点期待値が下がってしまいます。
1アウトからバントを行い、2アウトにしてしまうのはメジャーリーグであれ、日本のプロ野球であれ、
高校野球であれ、野球というスポーツである限り得点期待値は大きく下がります。
表2から1アウトからのバントで2アウトにしてしまうことは、得点期待値を大幅に下げ、もちろん結果として勝利確率を大きく下げます。今回一番言いたいのはこれです。
それでは送りバントが有効な場面というのはあるのでしょうか?今回参考にした本の中では、この場面のみと紹介されています。
表3 後攻チームが同点状況での勝利確率
(単位:%)

表3は2004年から2009年までの日本のプロ野球のデータを用いた勝利確率です。
改めて説明すると、0アウトランナー2塁から送りバントをして1アウトランナー3塁という場面を作った場合です。同点で9回裏の攻撃、1点さえ取れば勝ちという場面でのみ、アウトカウントを1つ増やしてでも、1アウトでランナー3塁を作ることで勝利確率が上がるという結果になっています。
それ以外のイニングで勝利確率が下がっているのは、アウトカウントを1つ増やすことで得点期待値が下がるため、そのイニングで取る得点が減少し勝利確率を下げてしまうという事です。
<結論>
・0アウトランナー1塁からバント 先述の理由により、有効ではない。
・0アウトランナー2塁からバント 1アウトでランナー3塁という場面は、犠飛、スクイズなど、特別な場面を作り出すことができるため、ぎりぎり有効。
・0アウトランナー1・2塁からバント 1アウトでランナー3塁という場面は、犠飛、スクイズなど、特別な場面を作り出すことができるため、ぎりぎり有効。
・1アウトランナー1塁からバント 先述の理由により、さらに有効ではない。
・1アウトランナー2塁からバント 先述の理由により、さらに有効ではない。
・1アウトランナー1・2塁からバント 先述の理由により、さらに有効ではない。
送りバントが有効な場面は、得点期待値は若干下がるものの、0アウトランナー2塁、または0アウトランナー1・2塁の場面のみと考えます。
普通のリーグ戦ではそこまで勝利確率にこだわる必要はないと思いますが、勝ちに行く戦略が結果的に勝利確率を下げてしまってはいけないので書き込みました。
今シーズンは大事な試合が続くと思いますので、少しでもチームが勝てばよいなと思います。
背番号2
PR